ポエム
タイトルを「タンパク質の線形応答理論に関する式変形の行間埋め」とかやってしまうと怖い人に見つかってぼこぼこにされそうだったので、丸いタイトルにした。
タンパク質のリガンド結合に伴う構造変化は線形応答理論で書けるよ~っていう論文が昔に出てます。同著者の日本語でのわかりやすい文章も出てます。モチベーション等はとても分かりやすいのですが、去年の自分は式変形ができなくて困っていました。最近気づいたら最後の式まで導出できるようになっていたので式変形をメモしておきます。
上の2つのリンク
導出
まずリガンド非結合状態のハミルトニアンをとして、分配関数は、次のように書ける。
は位相空間上の点のグラフで、溶質、溶媒含む粒子の座標を表す。最初なのでがの関数であることを明記したが以降は省略する。
また、リガンド非結合状態のハミルトニアンとリガンド結合状態のハミルトニアンは次式で結ばれる。
ここで、は系の粒子の個数で、はその粒子がもつポテンシャルを表す。ポテンシャルのままだと扱いにくいので一般化座標を用いて書き直したのが二つ目の等号。のように対応していると思えばいい。(だから範囲が1~Nから1~3Nになっている)(以降シグマの範囲をいちいち書くのも面倒なので省略する)
2式から、リガンド結合状態の分配関数は次のようになる。
一瞬ビビるが、微分は簡単に計算できる。
一階微分はの係数としてがの肩から出てきて、次のようになる。
は添え字のアンサンブル平均(つまり は結合状態でのの平均) 。つまりこの式は、摂動状態における残基の平均座標は、を摂動力で偏微分することによって得られることを示唆している。 二階微分も添え字に注意しつつ同様に計算すれば、
となる。ここでである。2つ目の等号については、共分散で出てくる式変形(二乗の平均ー平均の二乗)と同じ形。三次以上の項も同様に計算できて、同様の形になる。
ここで、を摂動力で偏微分することで、残基の平均座標が得られることを踏まえ、先ほどテイラー展開した式を偏微分することを考える。特定の残基に注目して、テイラー展開で得られた式を偏微分すると、次の式を得る。(シグマで動く変数と動かない変数があることに注意)
次の式変形が分かりやすいように両辺をで割った。この式に微分の結果を代入することで、
を得る。左辺がリガンド結合状態での平均を表すのに対し、右辺はを代入した結果、リガンド非結合状態の平均のみの式で表されていることが嬉しいポイント(つまりリガンド結合状態の情報を、非結合状態の情報のみで計算できる)。
最後に、摂動が十分小さいとして、2次以上の項を無視すれば、
となり、欲しかった式を得ることができた。
おわり